2004年04月26日

思いを置いておく場所

数年前に父親が世を去り、それまでに増して父親の存在を感じることがある。
不思議なものだ。
彼に肉体があった時には、その存在は肉体に閉じ込められていた。
彼は八ヶ岳南麓の家にいるのであって
それ以外のところにはいるはずもなかった。
ところが死んでしまった今、彼はここにも実家にもいるのだ。
ふと思い出したその時に、その場にいるような気がする。

わたしの家には仏壇がない。今は無い家が多いと思う。
ひょいと亡くなった人を思い出すとき、
よるべなく心の中で話しかけるのだが
こんな時に、ちょっと「ここ」に向かって話してみるという場所があると便利だなと思う。
なるほど、毎日仏壇に向かって手を合わせる人は
亡くなった人となにやら対話していたのだろう。
きょう、彫刻家の作品を見せてもらった。
プロダクトとしての道を歩み始めたそれは、
そういう思いを置いておく場所だった。
仏壇ではない。オブジェでもない。
誰かの写真を入れてもいい。
指輪を置いてもいい。その人の好きだったスポーツカーのキーでもいい。
ポルシェのミニカーでもいい。
小さな風景の中に思い出を置き、開いた小さな空間に思いを託す。
チェストやデスクにでも置いて、自分の何かへの、誰かへの思いを置いておく場所。
なんだかステキな居場所になりそうだ。

投稿者 りりこ : 2004年04月26日 22:10
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