2005年07月19日
真珠のピアスを買った
アルバイト先はジュエリースタジオ兼ギャラリーだ。
わたしは、ここに来るまでジュエリーにいっさい関心がなかった。
バスで乗り合わせる女性がちょっとおしゃれした程度のファッションで
サファイヤの周囲にメレダイヤが並んだようなペンダントをしていたりする。
あれがどうもわからない。
あるいはマダム風のファッションで、過剰とも思えるようなリングをしていたり。
OL時代はバブルの真っ最中で、ブランド物のリングやウォッチがはやったが、
ブランドの個性に喰い殺されそうで、買うことはなかった。
だから、40半ばをすぎた今まで、
ジュエリーに関してはわたしに基準はなかった。
なにがいいもので、価格相応で、もしくはお得なのか。
アルバイトを始めても、ジュエリーには関心が持てなくて、
それらを作る工程や技術、付帯する業務にばかり関心が向いた。
ところが、ドブドブドブとジュエリーに囲まれているうちに、
ようやくわたしにも次第に「基準」ができてきたのだ。
それはワインに詳しくない人が、
わけもわからず飲み続けるうちに判断基準を持つのと同じこと。
バイト先で真珠の仕分けをしている。
ダイヤのリングを磨く。
色石のリングを片付ける。
そのうち、ちょっとよその店を覗いてみる。
今までは同じカラット数でプラチナ台のダイヤのリングなら
3万円も12万円も同じに見えていたのだが、
実は全然違うものなのだということを知った。
なんといってもバイト先の店はとびきり石がきれいなのだ。
真珠も、形より光(照り)優先。
それが、身につけると本当にはっきりと差が出る。
とうとう、6月のある日、真珠のピアスを買った。
多少歪んでいて、ちょっとへこみがあるけれど
とびきりツヤがある。
ゆがみがあるせいで値段はぐっと安い。
安い値段が、全体に粗悪だからではなく、
いいものがゆがみのあるせいで安いのだと納得できる。
結局のところ、わたしがジュエリーに手を出さなかったのは
関心がなかったからではなく、
納得できる根拠がなかったからだとわかった。
そして、ここに置いてあるジュエリーの石は、
出会ってしまったらそのまま手放すのが
惜しいほど美しい石だからこそ
オーナーが売る相手も決まっていないのに仕入れてしまった
特別な石たちなのだと気づいた。
これなら売れそう、というよりも
これ、この値段なら買わなくちゃ損、というその気持ち。
真円からちょっと歪んだ黄色っぽい大珠の真珠のピアスが5万円。
それは以前はとても高いと思っていたのだが、
どうやらそうではないらしい。
身につけるとそれがわかる。
そして、なんともうれしい気持ちになる。
危険な世界に足を踏み入れてしまった気分だ。
ふふっ、並べて磨くほど手に入ったらすごいけど。
Posted by: りりこ : 2005年07月20日 22:08