2007年06月02日

時間だけはたくさんあった

青山の小さい三角の土地に、小さな店があった。
学生の頃のわたしはそこに毎日のようにいて
同じように毎日のようにいる人たちと
会話し、恋をし、孤独を味わい、言葉に溺れた。
音楽を聴き、言葉を連ねた。
同じ場所にある今の店で
同じように時を過ごす人たちがいるのだろうか。

あの頃、時間だけはたくさんあった。
指の間からこぼれる砂のように
無為に消費していった時間は、
今考えるととても美しかったのだと思う。

いつの日か、開発に飲み込まれそうな場所にありながら
時間を経て、姿も中身も変わっても、
ずっとその場所はある。
時折その前をとおり、閉まったドアの外から、
こうはいってあそこの隅のあの場所で
過ごした時間を思うことがある。
そのたびに、過ぎ行く時間の美しさを思う。
今、わたしのいるこの時間の美しさを。
生きていることは素敵だと思う。

投稿者 りりこ : 2007年06月02日 20:49
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